「それで俺は考えた。これは口にしてみた瞬間に離すのに違いない。とすれば、口にする魚の動作の起頭をたたく。つまり魚が餌を見つけ、動こうとした瞬間すでに合せているのだ。これが武道の呼吸でなくて何であろうか。相手が打ちかかって来るのを待って動くのでは遅すぎる。動こうとした時すでにたたいておく……よいか、もう一尾つってみせる」
(千葉周作;219頁)
現代の我々剣道家にすれば、この出鼻を打つ、所謂出鼻技というのは、至極当たり前のように普及しているわけですが、
しかし、それを編み出した当時の人たちは、こういった日常の生活の中とか、死合いを繰り返し、生死の狭間の中で、いろいろなものを悟ってきたのだろうなぁ、と思うと、非常に感慨深いものがありますね。
「これを当道場の宝として、このままここに飾らせる。これはな、力によって踏み破れるものではない。おぬしの全身からほとばしる眼に見えぬ気合いがこれを踏み折った。熱心に稽古すると、人間には、このような奇蹟に近いことができるという、これは立派な一つの証拠じゃ。みなもよいか、これを見て稽古をはげめよ」
(高柳又四郎;308頁)
中学の時の先輩に、木刀を叩き折ってしまった先輩がいたが・・・・
踏み込みとは、力いっぱいに無理やりに足を叩き付ける、というわけじゃないんだよね。
そもそも、そんな踏み込みじゃ、足を痛めるし、遠くにも踏み出せない。
足のうらを相手に見せたりなんかしたら、相当かっこ悪いしね。
体の節々の力のうまい使い方。重心の移動、そういった細かな些細なところがすごい重要だったりする。
うーん。
読むだけで、まるで自分が剣道やってるみたいな気分になるね。
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